新生児蘇生法事務局
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新宿区市谷本村町2-30
日本周産期・新生児医学会
新生児蘇生法普及事業事務局
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長野県立こども病院
中村 友彦 廣間 武彦1) 野村 雅子2) 奥原 香織2) 深尾有紀2)
長野県立こども病院 総合周産期母子医療センター 新生児科
1)長野県立こども病院 新生児科 / 2)長野県立こども病院 看護部
長野県立こども病院では、日本版の新生児蘇生法普及事業事務局を開催するにあたり、5名の新生児科医と7名の看護師・助産師が、2004年にハワイのKapiolani小児病院で行われたNRPのProviderコースとInstructorコースを受講し、米国小児科学会認定のNRP Instructorの資格を獲得しました。
講習会に必要な機材、テキストを研究費等で揃え、第一回目のNRP講習会を2005年11月19日に飯田市立病院講堂で開催しました。当日は小児科医、産婦人科医、看護師、助産師ら32名の参加がありました。
長野県での新生児蘇生法普及事業事務局は、長野県の広域な地理的特殊性を考慮し、今までに確立した地域と連携した周産期医療システムを生かして、インストラクターが「地域周産期センターに出向いて講習会を開催する方式(信州モデル)」を採用し、日本版の新生児蘇生法普及事業事務局の効率的な普及のための一つのモデルとなっています。
このモデルの特徴は、先に述べたように、インストラクターのいる施設に受講生が集まるのではなく、地域周産期センターにインストラクターが出向いて、その場所で講習会を開催することですが、その目的は大きく次のようなことが挙げられます。
1)近い場所で開催する方が少しでも受講者数が増加する。
2)総合周産期センターと地域周産期センター、そして診療所のスタッフとの交流を深める。
3)講習会開催方法を地域周産期センターに学んでもらう。
以上の目的を達成するため、病院や施設からの依頼を受け、受講者が少人数であってもインストラクターが出向いて講習会を開催したり、セミナーのプログラムに新生児蘇生法講習を組み込むなどして講習会を開催してきました。また、講習会を開催する地域周産期センターまたは近隣施設に勤務するインストラクターやAコース認定者の参加協力を得て講習会を開催してきました。
この信州モデル方式の講習会は、2008年4月より日本周産期・新生児医学会が認定する新生児蘇生法普及事業修了認定講習会(NCPR講習会)に移行し、県内では月に1度のペースで土曜日半日を使って各地の施設でNCPR講習会を開催しています。2010年2月までの講習会開催数はのべ32回、受講生は830名になります。
これは、長野県内の周産期医療従事者は約1,000人と予測され、約5年でその8割が受講した計算になります。
その結果として、次のグラフにあるように、長野県では重症新生児仮死のためにNICUで人工換気療法を必要とする新生児の入院数が明らかに減少してきています。 講習会開催に当たり、学会事務局への手続きや受講生の募集等の事務的仕事は、長野県立こども病院の看護師が日常業務をしながら担当していました。講習会開催にあたっては様々な苦労がありました。 そこで当初から考えていたのですが、2009年6月の長野県総合・地域周産期母子医療センター看護師連絡会で「講習会の主催の地域周産期センターへの委譲」を提案・検討し、各講習会の主催を2009年9月より地域周産期センターに移行することとなりました。移行後は当院担当者の事務的な仕事はずいぶん軽減されました。 |
長野県内で講習会を開催してから約6年が経過し、いくつかの検討課題もみえてきました。
まず、初期に受講した人に対しては、手技や知識の再確認といったフォローアップのためのプログラムが必要になる時期ではないかと考えます。県内の助産師会の際に、NCPR講習会の受講生から話を聞いたところ、「基本手技に対しては使用頻度が少ないため講習会では習得できた手技も自信が持てない」「受講後に施設で導入を試みているが、現場でのすり合わせの時点で疑問が出てくる」との意見がありました。このように受講後の各施設での取り組み後のフォローも需要が高いと感じています。
次に、受講生の職種の多様化です。当初は病院や施設に勤務する医師や看護師・助産師が対象となっていましたが、最近は、消防署に勤務する消防士や救急救命士の受講が増加しています。実際に車中分娩を体験したためNCPR講習会の受講を希望したり、自宅分娩で出生した赤ちゃんを救急隊員がマスク&バッグと胸骨圧迫をしながら搬送してきたとのエピソードも耳にしています。このようなことから、講義やケースシナリオは施設内での立会を想定した内容ばかりではなく、救急外来や院外での分娩に遭遇した場合等の内容を準備することも必要ではないかと考えます。