講習機材のご紹介

日本周産期・新生児医学会/新生児蘇生法委員会は、新生児蘇生法「専門」コースインストラクター養成講習会を開催していますが、以下にご紹介する機材は、この講習会で使用している物品を参考例として示したものです。
(注1) 新生児蘇生法の講習に必要な機材として写真で紹介されていますが、偏って「商品名」「企業名」等を特定するものではありません。講習会を開催される施設や講習会場の状況に応じて、日常的に使用されている機材を用いても構いません。
(注2) 下記の一覧には、講習会専用に手作りした物品(非売品)や一般雑貨品も含まれています。
2010年版ガイドラインで新しく追加された機器
ここに紹介するものは臨床使用で推奨されるものであり、講習会において機器使用を義務付けるものではありません。
Tピース蘇生装置【CPAP】(各講習会1台) | ||
① | ![]() |
一般名称:持続的気道陽圧 |
商品名称:レサシフロー | ||
講習に必要とされる機能 | ||
2010年版ガイドラインは、仮死児の蘇生では過剰な酸素投与を回避するために、新しく「パルスオキシメータ」「ブレンダー」の併用と共に、心拍数100以上で自発呼吸がしっかりしていても、努力呼吸と中心性チアノーゼが認められる場合は、まず空気を使用した「持続的気道陽圧(CPAP)」の使用が推奨されました。 このTピース蘇生装置①は、本体側ダイヤルで最大吸気圧(PIP)を設定し、呼吸回路の患者側で終末呼気圧(PEEP/CPAP)を調整することができます。 | ||
② | ![]() |
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従来から使用されてきたバッグマスク換気(自己膨張式、流量膨張式)が基本であることに変わりはありませんが、人工呼吸に必要な吸気圧や呼気圧の圧力加減は設定値によって一定になり、吸気・呼気の切り替えも実施者の手元(親指一本)②で操作するだけで、どなたでも人工呼吸を実施できることが長所です。
欠点としては、ガス源を必要とすることやバックマスク換気同様に口元リークが大きければ無効であること、さらに流量膨張式バッグでは得られた「肺のコンプライアンス」を手に感じることが出来ない等があります。 講習では、まず「口元リークを生じさせない確実なマスク換気法」を学んで頂くこと、適切な換気圧(PIP)と呼気圧(CPAP)をバックマスク等を使用した用手換気法によって、体感して頂くことが重要です。 |
パルスオキシメータ(各ステーション1台) | ||
① | ![]() |
一般名称:酸素飽和度測定器 |
商品名称:パルスオキシメータ | ||
講習に必要とされる機能 2010年版ガイドラインは、出生児の生体情報を客観的に評価するよう「パルスオキシメータ①」の使用を推奨しています。従って、本講習会でもSpO2値に基づいた手技・手順を学んで頂くことになりました。 使用機種の選定にあたっては、新生児用ディスポーザブルセンサーが使用できる機種が望ましいのですが、講習会としては、心拍数・SpO2値が表示されるだけでも十分に学んで頂けます。 本委員会が主催するインストラクター養成コースでは、特別にデザインされた「シミュレータ②」を使用していますが、一般の講習会では心拍数とSpO2値を表記した「紙芝居風シート③」(手作り)の類でも十分に活用出来ます。 |
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② | ![]() |
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③ | ![]() |
酸素流量計/ブレンダー(各ステーション1組) | ||
① | ![]() |
一般名称:空気・酸素混合器 |
商品名称:酸素ブレンダー | ||
講習に必要とされる機能 | ||
講習会場に医療ガス配管が設備されている場合を除いて、酸素ガスを用いた講習は困難であります。しかし、2010年版ガイドラインは「高濃度の酸素投与を回避する」ように改訂されましたので、実際の臨床現場ではブレンダー①の使用が必須となりました。 | ||
② | ![]() |
ブレンダー単体は価格的に高価であり、これを講習会専用に取り揃えるには躊躇されますので、適当な箱を利用して「ダイヤル」と「目盛値」を付け加えた手作り物品②を工夫されることも良いでしょう。 |
標準的に使用される講習機材~備品
蘇生テーブル(任意選択)(各ステーション1台) | ||
① | ![]() |
一般名称:ラジアントウォーマ |
商品名称:インファウォーマ | ||
講習に必要とされる機能 | ||
実技講習では、最初にラジアントウォーマ①の「電源」「照明」等の使用前動作はじめ、とくに「保温」の重要性を理解して頂くために必ずヒーターのスイッチON操作を実践して頂きます。 また、ラジアントウォーマ装置にはパルスオキシメータ、吸引、酸素ブレンダー、秒分タイマー等が付属しているものが多く、これらの付属機器を同時活用することが可能ですので、新生児蘇生法の基本手技が効率よく学んで頂けます。 しかしながら、会場によっては大型機材の搬入が困難な場合もありますし、「臨床用機器」を講習会用に併用しない旨を決めている施設もありますので、主催者は開催前に制約事項を確認してください。 |
蘇生テーブル(任意選択)(各ステーション1台) | ||
① | ![]() |
一般名称:講習用蘇生台(簡易テーブル) |
商品名称:(レンタル品) | ||
講習に必要とされる機能 大型機材を搬入できない会場では、会議用テーブルの上に据え置きできる「マット付き簡易テーブル②」(レンタル)の使用をお勧めします。 会議用テーブルの上に、直接、蘇生人形を寝かせて実習することも可能ですが、臨床現場にある蘇生台と比べてテーブル高が低いですから、約5cm高の「脚付き簡易型テーブル③」(手作り)があると良いでしょう。 |
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② | ![]() |
新生児蘇生モデル(各ステーション1体) | ||
① | ![]() |
一般名称:新生児蘇生モデル |
商品名称:レサシテーションベビー | ||
講習に必要とされる機能 | ||
② | ![]() |
新生児蘇生モデルの満たすべき第一の条件は、バッグマスク換気が適切に行われていることを評価できることです。すなわち、新生児の気道・気管の形状が解剖学的に模擬化されており、気道開通の処置が実習できること、マスク換気操作が適切に行われている時のみ胸郭の動きが目視できることが必須となります。第二としては、実効的な胸骨圧迫を学んで頂くために、新生児の胸部弾力性が実感でき、乳首の位置が明確に表示されている必要があります。第三は、臍帯の触診動作が可能であること、臍静脈からの薬物投与が可能であること、等が理想的です。①②③ これらの条件がすべて満たされた、いわば精巧な蘇生モデルを実技実習に使用(とくに気管挿管を指導)する時は、事前に受講者へ取り扱い方法を十分に説明しておく必要があります。とくに気管挿管は、喉頭部の構造や喉頭鏡の使い方を知らないと、無理な力が加わり、蘇生モデルを損傷させる可能性があります。市販されている蘇生モデルは製品としての構造材質に一長一短がありますので、気管挿管の練習に重点をおく講習会では「気管挿管練習専用モデル④」の併用をお勧めします。 いずれのモデルも気管挿管の実習には破損し易いことを承知し、専用の潤滑剤(販売各社が提供するシリコンスプレー)もしくはより臨床に近いものとして“水”を用意し、喉頭部に薄く添付しながら実習して頂くことが重要です。 |
③ | ![]() |
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④ | ![]() |
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高機能シミュレーター | ||
心拍、呼吸、皮膚色、筋緊張、泣き声などを遠隔操作で再現できるほか、シナリオのプログラや実際に行われた処置を記録する機能を持った高機能シミュレーターも存在します。 |
エアポンプ(各ステーション1台) | ||
① | ![]() |
一般名称:エアポンプ |
商品名称: - | ||
講習に必要とされる機能 | ||
講習会では、基本手技として流量膨張式バックマスク換気の実習を行います。そのためガス駆動源として「エアポンプ(最大流量10L以上、安永YP-20A)①」を用意してください。また同時に、実習では適切な吸入ガス投与流量の設定も学んで頂くことになりますので、「酸素流量計(加湿瓶は不要)」も必要です。 エアポンプは、雑貨品として多種多様な機種が市販されていますが、軽量・小型・静音タイプの機種(出来れば吸引付き、安永YP-20V)を推奨します。 |
自己膨張式蘇生バッグ(各ステーション1具) | ||
① | ![]() |
一般名称:蘇生バッグ |
商品名称:シリコン・レサシテータ | ||
講習に必要とされる機能 | ||
② | ![]() |
蘇生バッグは自己膨張式バッグ①②と流量膨張式バッグに大別され、受講者にはそれぞれの特徴(利点と欠点)を理解して頂くことが大切であり、このため各ステーションに両者を揃えることが必須となります。 |
③ | ![]() |
いずれも、圧力メーター(マノメータ)やリリーフバルブを備えることが理想的ですが、現在の市販品のすべてがこの条件を満たしている訳ではありません。自己膨張式バッグは、口元リークがあっても強制的にバッグが膨らみ、またバックの押し方によっては肺への換気が行われず、口元周辺から吸気ガスが漏れていても、不慣れな人では「換気が出来ている。」と誤解し易いので、よく観察して下さい。 |
※必ず「マノメータ③」(ディスポーザブル)を併用し、モデルの胸郭の動きを確認するよう指導して下さい。 講習会で使用する自己膨張式蘇生バッグの標準容量は、正期産児を対象にして500mlを推奨しています。容量が少ないと吸気時間が十分維持できず、大きすぎると過大な圧が懸かる可能性があります。 |
流量膨張式蘇生バッグ(各ステーション1具) | ||
① | ![]() |
一般名称:蘇生バッグ |
商品名称:ハイパー インフレーション バッグ | ||
講習に必要とされる機能 | ||
② | ![]() |
蘇生バッグは流量膨張式バッグと自己膨張式バッグに大別され、受講者にはそれぞれの特徴(利点と欠点)を理解して頂くことが大切であり、このため各ステーションに両方を揃えることが必須となります。 流量膨張式バッグ①を使用する場合、ブレンダーを経由した吸入ガスは、酸素流量計による流量調節(新生児では5~10L/分位が適量)が必要です。 |
手元に付いている圧リリーフ調節弁で「CPAP(5~6cmH2O程度とし、8cmH2Oを超えないこと。)」を設定し、新生児に適した大きさのマスクを装着して新生児の鼻・口にあてるとCPAPを行うことができ、新生児の口元から僅かに離すと「フリーフロー酸素投与」になります。 用手換気による吸気圧「PIP(30~35cmH2O程度)」は、ほとんどの市販品が吸気圧リリーフ弁を装備していませんので、バッグに加えた圧が新生児の肺に懸かってしまいます。従って、これを使用する時は必ず「マノメータ②」の値を注視し、加圧しなければなりません。 |
喉頭鏡(各ステーション1組) | ||
① | ![]() |
一般名称:喉頭鏡 |
商品名称:ファイバーオブティック喉頭鏡 | ||
講習に必要とされる機能 | ||
新生児の喉頭展開に使用する喉頭鏡は直式ブレード(ミラー型、ウィスヒップル型)①で、サイズ00, 0, 1を用います。相互に互換性があるグリーンスペック(ハンドルに緑色のラインが入った製品)が理想的です。サイズ00を用意していない市販品もありますが、成熟児のみを扱う場合はサイズ0と1で十分です。 ブレードの形状は製品により微妙に異なり、またハンドルも標準型、スリム(長さは標準型と同じで、細身)、スタビーまたはショート(太さが標準型と同じで、長さが短い)、ミニ(おおむねスリムの太さで、かつスタビーの長さ)がありますが、個々の好みで選択して下さい。 |
タイマー(ストップウォッチ)/メトロノーム(各ステーション1個) | ||
① | ![]() |
一般名称:タイマー、メトロノーム |
商品名称: - | ||
講習に必要とされる機能 | ||
新生児蘇生法では、仮死児の状態を30秒毎に評価するアルゴリズムに基づいて行います。そのためシナリオ実習は、一つの基本手技を30秒間継続して頂くことになりますので、タイマー(またはストップウォッチ)を用意しなければなりません。 CPRタイマー①は、スタートボタンを押すと時間がカウントアップ、27秒経過すると予報を発し、ちょぅど30秒でタイムカウントが停止します。そして、停止と同時に「6秒針表示」モードになりますので、この間に「呼吸回数」「心拍数」を実習者は計測する訓練を行うことができます。 | ||
② | ![]() |
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臨床用CPRタイマーはNCPR専用のトレーニング・モードを装備していますので、教育機材としても有用なものです。 新生児蘇生法のアルゴリズムにおいて、心拍や呼吸回数の基本レートである「40/60/80/100/120等」のリズムは、しっかりと体感して頂かなければなりません。そのためにはメトロノーム②の使用が便利です。この製品(ローランド製)は使用法も簡単で、コンパクトであり低価格で入手することができます。現在、市販品でメモリー機能・音量調節が付いているものはこの機種のみです。 |
アルゴリズム図(パネル)、イーゼル(各ステーション1組) | ||
① | ![]() |
一般名称:パネル、スタンド |
商品名称:アルゴリズム図、イーゼル | ||
講習に必要とされる機能 | ||
アルゴリズム図①は、本医学会(新生児蘇生法普及事業)で販売していますが、講習ではこの図をパネルに貼り付け、受講者から常に見易い位置に掲示します。この時、軽量・コンパクト(折り畳み式)なイーゼル②の使用をお勧めします。 | ||
② | ![]() |
消耗品収納袋(各ステーション1枚) | ||
① | ![]() |
一般名称:収納袋 |
商品名称:講習機材ポシェット | ||
講習に必要とされる機能 | ||
講習会で使用する消耗品は様々な種類があり、しかも全てが一つに収納されるのであれば便利です。消耗品類を箱の中に入れて保存する方法もありますが、いざ実技実習となると物品を確認しながらテーブルの上に並べ直すのも煩わしい作業となります。どこに何が収納されているか、常に一目瞭然に把握出来る「専用ポケット」が付いた収納袋 ①は、こうした煩わしさを解消してくれます。シナリオ実習にそのまま利用でき、機材の出し入れ、持ち運び等---とくに開催件数を多く行われている主催者の方々に便利な「NCPRオリジナル品」です。 |
標準的に使用される講習機材~消耗品
消耗品類(各ステーション1組) |
消耗品名称 | 使用サイズ | 販売企業(参考) | 備考 |
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吸引チューブ | 12Fr 10Fr 8Fr 6Fr |
テルモ、他 | 羊水混濁時の吸引 成熟児、低出生体重児、気管チューブ用 |
バルブシリンジ | 大 小 |
アトムメディカル、他 | 鼻腔、口腔の吸引 |
リトルサッカー | 未熟児用 新生児用 |
メディカルプロジェクト | 鼻腔、口腔の吸引 (別途吸引器が必要) |
フェイスマスク | 大(新生児用) 小(新生児用) |
メディカルプロジェクト | 非円形(三角形)の形状により眼球圧迫を防止 |
気管チューブ | 3.5 3.0 2.5 |
テルモ、他 | カフ無し |
スタイレット | 2.5以上反応 2.0以上反応 |
スミスメディカル インターメド |
標準タイプ 極細タイプ |
呼気炭酸ガス検出器 | ペディキャップ ミニ・スタットキャップ |
コヴィディエン エムピーアイ |
オリジナル品 長時間使用が可能 |
臍帯静脈カテーテル | 5.0Fr | コヴィディエン | PVCフリー |
新生児用聴診器 | リットマン | スリーエム | 新生児用 |
栄養チューブ | 6.0Fr | アトムメディカル、JMS、他 | カテーテルチップ型、 造影剤ライン入り、 誤接続防止型 |
注射器 | 1.0ml 2.5ml 5.0ml 10.0ml 20.0ml 30.0ml 50.0ml |
JMS、他 | カテーテルチップ型 (黄色) |
注射器 | 1.0ml 2.5ml 5.0ml 10.0ml 20.0ml 30.0ml 50.0ml |
ニプロ、他 | 汎用型(透明) |
SpO2センサー | 新生児用 | マシモ、日本光電、他 | ディスポーザブル (ケーブル付き) |
絆創膏 | 1.0インチ幅 | スリーエム | 汎用品 |
バスタオル(二枚) | - | - | 汎用品 |
フェースタオル(同) | - | - | 汎用品 |
推奨を検討中の新しい消耗品 |
プラスチックバッグ | 未熟児を保温する際に使用するプラスチックバッグの市販品は、東機貿から輸入販売開始されていますが、正期産児に適応するサイズではありません。緊急時には、院内にある食品保存用プラスチックフィルムやステリドレープ(スリーエム)の利用も有効です。 |