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日本周産期・新生児医学会
新生児蘇生法普及事業 事務局
〒162-0845
新宿区市谷本村町2-30
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出生により胎児は新生児として胎外生活に適応した呼吸循環動態に切り替わらなければならないのですが、この呼吸循環動態の移行が順調に進行しない事例は、全出産の約10%にみられ、さらに全出生児の1%が救命のために本格的な蘇生手段(気管挿管、胸骨圧迫、薬物治療)を必要とし、適切な処置を受けなければ、死亡するか、重篤な障害を残すとされています1,2)。そこで、AHA 2000心肺蘇生国際ガイドライン(以下AHA 2000)では、「すべての分娩に新生児の蘇生を開始することのできる要員が少なくともひとり、専任で立ち会うべきであり、さらに気管挿管と薬剤投与を含む全ての蘇生の技術を備えているものが、いつでも手助けできるようにしておくべきである。」と推奨されています3)。しかし、わが国はそうした体制は未だ確立していません。

こうした体制を実現するために、日本周産期・新生児医学会は、2007年に日本蘇生協議会(Japan Resus<wbr>citation Council;JRC)に加盟したのを契機に、同年7月より学会事業として新生児蘇生法普及(NCPR)事業を開始しました。このシミュレーション方式の、少人数講習会による新生児心肺蘇生法修得事業は予想外の進展をみせ、3年後の2010年9月には学会認定講習会受講者が2万人を超え、新生児蘇生法専門コースインストラクターは1,300名を超すまでになりました。わが国で、わずか3年という短期間にこのような急速な普及をみた蘇生法講習会事業は他に類を見ません。これは一重にインストラクターの皆様方の献身的なご活躍のおかげであります。また日本産婦人科医会、日本助産学会、日本助産師会、そして日本新生児看護学会は、積極的に各地のNCPRインストラクター育成を年間事業計画として企画して下さいました。今日のNCPR事業の全国的規模での普及はこうした具体的なご支援なしにはあり得ないことと考えております。この場を借りて厚く御礼申し上げるとともに今後更なるご支援ご協力をお願いする次第です。

1987年よりneonatal resuscitation program(以下NRP)としてこうした実技講習会による新生児蘇生法普及事業を開始していた北米では、ほとんどの周産期医療関係者が新生児心肺蘇生法の実地講習会を受講し、現在では250万人以上のproviderと3万人以上のinstructorが登録されているとのことです。こうしたプログラムのおかげで、北米の新生児仮死の蘇生成功率は向上しましたが、その効果はNICUがなく小児科医の当直がいないような小規模の病院でより顕著であったと報告されています4)。北米における、分娩は全例総合病院で行われていますが、わが国では、全分娩の約半数は、産科診療所や助産師施設で取り扱われています4)ので、NRPのようなプログラムがわが国で展開され、新生児を取り扱うすべての医療従事者が新生児の救命処置に習熟した場合には、その効果は産科診療所や助産師施設でより顕著になるのではないかと期待されます。

AHAのほかにヨーロッパ蘇生会議、カナダ心臓・脳卒中財団、ラテン・アメリカ蘇生会議、オーストラリア・ニュージーランド蘇生会議、南アフリカ蘇生会議、アジア蘇生会議を構成メンバーとした国際蘇生法連絡委員会(International Liaison Committee on Resuscitation、以下ILCOR)は、2005年11月29日の(Consensus 2005)5)から、5年ぶりに2010年10月18日心肺蘇生法の概要の大幅な改正を提言しました(Consensus 2010)6)。今回の改訂では、新生児蘇生法に関してはWorksheet author7)(日本からは田村正徳、森臨太郎が正式メンバー、諌山哲哉がシステマティックレビュー専門家としてオブザーバー参加)が、新生児の心肺蘇生に関する多数の論文を34のテーマ別に分類して3年以上かけて、吟味し(©2010 Evidence Evaluation Worksheets http://www.americanheart.org/presenter.jhtml?identifier=3058489)、EBMの観点から心肺蘇生法を評価したものであります8)

2005年の段階でわが国はILCORに加盟していなかったため、Consensus 2005の内容を事前に把握することができずConsensus 2005の公表を待って、日本救急医療財団の日本版救急蘇生ガイドライン策定小委員会(委員長:丸川征四郎、小児科学会推薦委員:清水直樹、田村正徳)が、日本版救急蘇生ガイドラインを発表できるまでには1年以上の歳月を要しました9)。しかし、今回は日本蘇生協議会ならびに日本周産期・新生児医学会と守秘義務契約を結んだ日本周産期・新生児医学会NCPR改訂準備ワーキンググループメンバー10)と厚生労働省科学研究事業「Consensus 2010に基く新しい日本版新生児蘇生法ガイドラインの確立・普及とその効果の評価に関する研究 (分担研究者 田村正徳)」のご尽力のおかげでILCORのConsensus 2010公表とほぼ同時にNCPRガイドライン201011)を発表することができました。

是非インストラクターの皆様には日本周産期・新生児医学会の公認NCPR講習会を開催していただき、受講者の方に新生児蘇生法の理論と技術を習得していただき、少しでも多くの赤ちゃんとお母さんの幸福に貢献できることを心から祈念しています。


参考文献

1) Perlman JM, Risser R:Cardiopulmonary resuscitation in the delivery room:associated clinical events. Arch Pediatr Adolesc Med. 1995;149:20?25.

2) Barber CA, Wyckoff MH. Use and efficacy of endotracheal versus intravenous epinephrine during neonatal cardiopulmonary resuscitation in the delivery room. Pediatrics. 2006;118:1028?1034.

3) The American Heart Association in Collaboration with the International Liaison Committee on Resuscitation : Part 11. Neonatal resuscitation. Guidelines 2000 for cardiopulmonary resuscitation and emergency cardiovascular care. Circulation, 102 (suppl):1343-1357, 2000.

4) Patel D, Piotrowski Z, Nelson M, Sabich R. Effect of a Statewide Neonatal Resuscitation Training Program on Apgar Scores Among High-Risk Neonates in Illinois. Pediatrics, 2001;4:648-55.

5) 2005 International Liaison Committee on Resuscitation, American Heart Association, and European Resuscitation Council. 2005 American Heart Association Guidelines for Cardiopulmonary Resuscitation and Emergency Cardiovascular Care : Part 7. Neonatal Resuscitation. Circulation, 112 (suppl):III-91-III-99, 2005.

6) Neonatal Resuscitation: 2010 International Consensus on Cardiopulmonary Resuscitation and Emergency Cardiovascular Care Science With Treatment Recommendations Jeffrey M. Perlman, Jonathan Wyllie, John Kattwinkel, Dianne L. Atkins, Leon Chameides, Jay P. Goldsmith, Ruth Guinsburg, Mary Fran Hazinski, Colin Morley, Sam Richmond, Wendy M. Simon, Nalini Singhal, Edgardo Szyld, Masanori Tamura, Sithembiso Velaphi, and Neonatal Resuscitation Chapter Collaborators. Circulation. 2010;122:S516-S538, doi:10.1161/CIRCULATIONAHA.110.971127 http://circ.ahajournals.org/cgi/content/full/122/16_suppl_2/S516

7) ILCOR新生児部会Worksheet authorメンバー  Dianne Atkins; Khalid Aziz; David Boyle; Steve Byrne; Peter Davis; Jordan Duval-Arnould; Dana Edelson; William Engle; Marilyn B. Escobedo; Maria Fernanda de Almeida; David Field; Judith Finn; Jay Goldsmith; Ruth Guinsburg; Louis Halamek; Elizabeth Hunt; John Kattwinkel; Jane McGowan; Douglas McMillan; Lindsay Mildenhall; Rintaro Mori; Colin Morley; Susan Niermeyer; Colm O’Donnell; Jeffrey Perlman; Yacov Rabi; Sam Richmond; Steven Ringer; Nalini Singhal; Jasmeet Soar; Ben Stenson; Edgardo Szyld; Masanori Tamura; Enrique Udaeta; Sithembiso Velaphi; Dharmapuri Vidyasagar; Michael Watkinson; Gary Weiner; Myra Wyckoff; Jonathan Wyllie; and Trevor Yuen (http://www.americanheart.org/presenter.jhtml?identifier=3058489

8)ILCOR 新生児部会Writing authorメンバー Jeffrey M. Perlman,* Jonathan Wyllie,* John Kattwinkel, Dianne L. Atkins, Leon Chameides, Jay P. Goldsmith, Ruth Guinsburg, Mary Fran Hazinski, Colin Morley, Sam Richmond, Wendy M. Simon, Nalini Singhal, Edgardo Szyld, Masanori Tamura, Sithembiso

9) 監修:日本救急医療財団心肺蘇生法委員会 編著:日本版救急蘇生ガイドライン策定委員会,「救急蘇生法の指針2005 医療従事者用」、新生児の救急蘇生法、p127-134、へるす出版、東京、2007.

10) 日本蘇生協議会/日本周産期・新生児医学会と守秘義務契約を結んだ日本周産期・新生児医学会NCPR改訂準備部会メンバー
日本蘇生協議会・日本救急医療財団合同ガイドライン作成作業部会NEO
共同座長:田村正徳、和田雅樹 (日本小児科学会推薦委員)
日本周産期・新生児医学会NCPR改訂準備部会
草川 功(委員長)、細野茂春(副委員長)、森 臨太郎(顧問)、和田雅樹、側島久典、西田俊彦、滝 敦子、中野玲二、杉浦崇浩、武内俊樹、五石圭司、石川 源、正岡直樹、関 博之(日本産婦人科学会推薦委員)

11)日本蘇生協議会ホームページより
 http://jrc.umin.ac.jp/pdf/20101019/guideline4_NEO.pdf
    日本救急医療財団ホームページより
 http://www.qqzaidan.jp/pdf_5/guideline4_NEO.pdf